海外少年サッカーはなぜ練習時間が少ないのか

海外少年サッカー、特にヨーロッパでは、練習時間の考え方が日本とは少し違います。

イタリアをはじめ、フランス、ドイツ、イギリス、スペインなどでも、同じような傾向が見られます。

実際にイタリアでは、1回のトレーニングは基本的に90分程度が中心で、2時間以上の練習というのはほとんど聞いたことがありません。

一見すると少ないようにも感じますが、そこには理由があるように感じています。

一方で、ブラジルやアルゼンチン、日本を含めたアジアの国々では、ヨーロッパに比べて練習時間が多い傾向があるとも言われています。

では、なぜヨーロッパでは、あえて練習時間を長くしないのでしょうか。

ヨーロッパの少年サッカーの実際の練習環境

ヨーロッパでは、1週間あたりのトレーニング時間はおおよそ300分前後になるような構成が一般的です。

週に2〜3回のトレーニングに加えて、週末の試合が入るという形です。

特に試合が多いと感じるのは、8歳頃からのプルチーニから、10〜12歳のエゾルディエンティの時期です。

この年代は週末に大会や試合が重なることも多く、土日どちらも試合ということも珍しくありません。

大会などでは1日に何試合も行うこともあり、週末に試合が続くことも珍しくありません。

時には金曜日から日曜日にかけて試合が入るようなケースもあります。

一方で、その後ジョバニッシミの年代に入り、いわゆる競技としての段階に進むと、試合は基本的に週末どちらか1回に整理されるようになります。

サッカーが本格的な競技としての段階に入ることで、環境やリズムも少しずつ変わっていきます。

それでも、1回のトレーニング時間自体が長くなることはあまりありません。

試合中心の育成と日常のサッカー

イタリアでは、いわゆる走り込みのようなトレーニングはほとんどなく、練習の中でも試合形式、いわゆるゲームの時間が多く含まれています。

もちろん最初にテクニカルな練習や基礎的なメニューを行うこともありますが、日本と比べるとゲームの比重が高いように感じます。

特に印象的なのは、小さい頃から実際の試合を多く経験させる環境があることです。

技術ができてから試合に出るというよりも、試合の中でサッカーを覚えていくような感覚に近いように感じます。

また、いわゆる朝練のような文化はほとんど見かけません。

学校の前に練習をする、といった形も現実的にはなく、クラブのトレーニング以外で何かを強制的に積み重ねるという空気はあまり感じません。

個人的に自主練をしている子もいるとは思いますが、日本のようにそれが当たり前という雰囲気はほとんどありません。

そのためか、クラブの練習以外でも、公園などで自然に集まってサッカーをしている子どもたちの姿はよく見かけます。

いわゆる「自主練」という形で一人で取り組んでいる様子はあまり見ませんが、サッカーそのものを楽しんでいる時間は日常の中にしっかりあるように感じます。

やりすぎないという考え方

全体として感じるのは、「やりすぎない」という感覚です。

実際のトレーニングを見ていても、イタリアの練習時間はだいたい1時間半程度で終わることがほとんどです。

ただ、その時間感覚も少し印象的で、子どもたちにとっては「ちょうどいい」というより、「もう少しやりたい」というところで終わることが多いように感じます。

実際には、練習が終わる時間になっても、5分、10分と自然に延びてしまうこともあり、子どもたちはまだやりたそうにしています。

一方で、迎えに来ているお父さんやお母さんは「そろそろ帰りたい」と思っているような場面もあり、その温度差が見えるのも印象的です。

あえて少し余裕を残すような形で終えることで、「またやりたい」と思える状態を大切にしているようにも感じます。

実際に、Eizが小さい頃に、クラブの練習以外でもキャンプに参加したり、自宅でも練習をしていた時期がありました。

コーチから特に何かを言われたことはありませんでしたが、他の保護者の方から「そこまでやると身体への負担が大きいのではないか」といった声をかけられたことがあります。

また、そうした経験を通して感じたのは、「やりすぎは良くないのではないか」という考え方が、ある程度共通した感覚としてあるということです。

すべての人がそう考えているわけではないと思いますが、少なくとも周りの保護者の方々の中には、そうした意識を持っている人が一定数いるように感じました。

こうした環境の中では、サッカーを長く続けやすいという良さもあるように感じます。

無理に追い込まれることが少ない分、サッカーそのものを嫌いになることなく、自然と続けていくことができる環境なのかもしれません。

イタリアでは試合の中で自然と体力が身についていくように感じる一方で、日本のように走り込みや基礎的なトレーニングを通して体力を積み上げていく環境も、基礎体力を作るという意味ではとても大切で、強みのあるものだと思います。

サッカーから離れる時間と休む文化

イタリアでは、6月の初めに学校が終わります。

そしてその流れで、6月中旬頃にはクラブの活動もストップします。

そこから長い夏休みに入ります。

学校は9月の2週目頃から始まり、サッカーの活動もそれに合わせて、または少し前から再開されます。

クラブによっては夏の練習が設けられていることもありますが、それも任意参加であり、強制ではありません。

そのため、サッカーを真剣にやっている家庭であっても、夏はバカンスに行き、まったく練習に参加しないということも普通にあります。

また、夏休みだけでなく、クリスマスやイースターなどの休暇の時期にも、子どもたちをしっかり休ませるという感覚があります。

長期休みだけでなく、たとえ数日間の短い休みであっても、その期間はあえてサッカーから離れさせるようなスタンスに見える場面もあります。

また、プロクラブの下部組織であっても、イタリアやスペイン、フランス、ドイツ、イギリスなどヨーロッパでは、しっかりとした夏休みを取ることが大切だという考え方があるようです。

実際に、サッカーをまったく行わない期間をあえて設けているという話もよく聞きます。

育成の段階であっても、こうしたサッカーから離れる時間は意図的に作られているように感じます。

また、イギリスに住んでいる姉から聞いた話でも、同じような感覚があるようです。

イギリスでも夏休みはイタリアより少し短いものの、サッカーをしない期間をしっかり取ると話していました。

さらに、クリスマスなどの宗教的な休みの時期には、試合や公式戦もストップすることが多いそうです。

こうした点を見ると、サッカーから離れる時間を作るという考え方は、イタリアだけでなくヨーロッパ全体に共通している部分もあるのかもしれません。

こうした夏の期間に、あえてサッカーから完全に離れるような時間を取るという考え方にも、最初は少し驚きがありました。

ただ見ているうちに、それは単に休んでいるというよりも、心身ともにリセットするための時間として設けられているようにも感じるようになりました。

あえて離れることで、また次にしっかり取り組める状態を作る。

そうした考え方には、どこかプロフェッショナルな印象を受けたこともあります。

また、すべての環境が同じ考え方というわけではありません。

特にプロクラブの下部組織などでは、週末の試合だけでなく、金曜日から遠征に出て月曜日に帰ってくるようなスケジュールになることもあり、サッカーに費やす時間が大きく増える場合もあります。

そうした環境では、日常の多くの時間がサッカーに使われることになります。

そのため、親の中には「サッカー以外の活動や経験も大切にしたい」と考え、あえてそういった環境を選ばない家庭もあります。

海外少年サッカーに見る考え方の違い

イタリアの育成を見ていて強く感じるのは、単に練習時間が少ないということではなく、「段階ごとに考え方が分けられている」という点です。

プルチーニやエゾルディエンティといった年代までは、サッカーはあくまで「楽しむ段階」として位置付けられており、無理に負荷をかけたり、詰め込んだりするような環境ではありません。

一方で、ジョバニッシミの年代に入る頃から、アゴニスティカ(agonistica)と呼ばれる、サッカーを競技として取り組む段階へと移っていきます。

つまり、小さい頃からすべてをストイックに積み上げていくのではなく、「楽しむ段階」と「競技として取り組む段階」が明確に分けられているのが特徴です。

だからこそ、小さい頃には「やりすぎない」「無理をさせない」「休ませる」といった考え方が、特別なことではなく、自然なものとして存在しているように感じます。

練習時間が短いことや、長期的にサッカーから離れる時間をあえて作ることも、ただ楽をしているわけではなく、この育成の考え方とつながっているのではないかと感じています。

私自身は、小さい頃から「練習はやればやるほど上手くなる」という感覚でスポーツに向き合ってきました。

だから最初は、これだけ練習量が少なくて大丈夫なのかと感じたことも正直あります。

ですが実際にその環境の中で子どもたちを見ていると、無理に追い込まれることなく、自然とサッカーを楽しみながら続けている姿がありました。

そしてその背景には、「今は楽しむ段階なのか、それとも競技として取り組む段階なのか」という考え方がしっかりと分かれていることがあるのだと、次第に感じるようになりました。

そう考えると、この「やりすぎない」という感覚や、あえてサッカーから離れる時間を作るという選択も、単なる文化の違いではなく、育成としての一つの考え方なのかもしれません。

イタリアの育成環境や現場のリアルについては、こちらの記事でも詳しく書いています。

イタリア少年サッカーのリアル|クラブ環境・費用・親・試合のすべて

走り込みが少ないイタリア少年サッカー文化

イタリア少年サッカーの育成環境

つづく

タイトルとURLをコピーしました